令和5年度の主な税制改正事項(学校法人向け)
令和5年度税制改正のうち、学校法人の税務にあたってご留意いただきたい改正点をまとめてみました。
【法人税関係】
1.法人税の税率改正の延期
中小企業者等(すべての学校法人を含む)の所得800万円以下部分の適用税率15%→19%への改正がさらに2年間延期されました。
(令和7年4月以後開始年度から19%適用)
2.青色申告に関する手続の簡素化
青色申告承認申請書および青色申告をやめる旨の届出書の記載事項が一部簡素化されました。また、青色申告をやめる旨の届出書の提出期限が、やめようとする事業年度の申告期限とされました。
(青色申告承認申請書に関する改正は令和9年1月以後開始年度から、青色申告をやめる旨の届出書に関する改正は令和8年1月以後開始年度から適用)
【電子帳簿保存法関係】
1.電子取引情報の保存制度の見直し
①相当の理由によりシステム対応等が間に合わなかった事業者は、税務調査時に出力書面の提示・提出とデータのダウンロードができれば、データの検索機能の確保は不要とされました。
②税務調査時に取引月日・取引先ごとに整理された書面の提示・提出とデータのダウンロードができる事業者は、データの検索機能の確保は不要とされました。
③データの検索機能の確保が不要とされる事業者の売上高基準が5,000万円以下(改正前は1,000万円以下)に引上げられました。
(令和6年1月以後行う電子取引から適用)
【消費税関係】
1.インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置(2割特例)
免税事業者がインボイス発行事業者となったことにより課税事業者となった場合には、仕入控除税額を、課税売上税額の80%とすることにより、納付税額を課税売上税額の20%とすることができることとされました。
(令和5年10月1日~令和8年9月30日の属する事業年度につき適用)
2.少額取引(1万円未満)についてのインボイス保存不要措置
基準期間(前々事業年度)における課税売上高が1億円以下、または特定期間(前事業年度上期)における課税売上高が5,000万円以下である事業者の課税仕入れについて、その金額が税込み1万円未満であるものについてはインボイスの保存を必要とせず、一定の事項が記載された帳簿のみ保存すれば仕入税額控除が可能とされました。
3.少額な返品・値引き等にかかる返還インボイス交付の免除措置
インボイス発行事業者が返品、値引等を行った場合の返還インボイスの交付について、その返品、値引等が税込み1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除されることとされました。
(令和5年10月1日以後の課税売上げについて行う返品・値引き等から適用)
4.インボイス発行事業者にかかる登録制度の見直し
①令和5年10月1日からインボイス発行事業者の登録を受けようとする事業者が令和5年4月以後に登録申請(原則は令和5年3月までに申請が必要)した場合も、申請が遅れた事情にかかわらず令和5年10月1日から登録を受けることが可能となりました。
②免税事業者が令和5年10月2日以後に登録を受けようとする場合、登録申請書に登録希望日として提出日から15日以降の日を記載することとし、登録の完了が登録希望日後となった場合もその登録希望日に登録を受けたものとみなされることとなりました。
③免税事業者が課税期間(事業年度)の初日から登録を受けようとする場合には、その課税期間の初日から起算して15日前の日(改正前:その課税期間の初日の前日から起算して1ヵ月前の日)までに登録申請書を提出しなければならないこととされました。
④適格請求書発行事業者が翌課税期間の初日から登録を取り消そうとする場合には、その翌課税期間の初日から起算して15日前の日(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日)までに届出書を提出しなければならないこととされました。
【源泉所得税関係】
1.源泉徴収票等の提出方法の見直し
給与支払者が給与受給者の市区町村に給与支払報告書を提出することにより、税務署に源泉徴収票を提出したものとみなされることとされました。これに伴い、税務署への源泉徴収票提出不要の範囲が市区町村への給与支払報告書提出不要の範囲と同様とされました。
(令和9年1月以後に提出する源泉徴収票から適用)
2.源泉徴収票等を電子データで提供する際の承諾手続の簡素化
給与支払者が給与受給者に源泉徴収票等を電子データで提供する際の給与受給者の承諾手続について、あらかじめその旨の通知をしたうえで、定めた期間に不承諾の回答がないときは承諾があったものとみなすことができることとされました。
(令和5年4月以後に行う通知から適用)
3.扶養控除等申告書の記載事項に異動がない場合の記載の簡素化
給与受給者が給与支払者に提出する扶養控除等申告書の記載事項がその前年と異動がない場合には、異動がない旨の記載をすれば足りることとされました。
(令和7年1月以後に提出する扶養控除等申告書から適用)
4.保険料控除申告書の記載事項の簡素化
給与受給者が給与支払者に提出する保険料控除申告書の記載事項のうち、保険金受取人の続柄の記載が不要になる等、記載が簡素化されました。
(令和6年10月以後に提出する保険料控除申告書から適用)